【VW Tクロス 新型試乗】クルマの良さとは裏腹に、評価を下げるカーナビ…中村孝仁 2024年7月、VWは一気に4モデルの新車を発表した。それらはすべて基本的にICE(内燃機関)を中心とするモデルだった。それまで盛んに「ID」と名の付くBEV(バッテリー式電気自動車)の訴求に勤めてきたVWが、ほぼ180度方向転換をした印象を受けたものである。 その先陣を切って販売が開始されたのが、『Tクロス』である。このクルマは2020年に日本に導入が開始されたモデルで、VWラインナップの中では最もコンパクトなSUVである。必要にして十分な装備と、VWらしい質素で質実剛健なイメージを押し出したモデルだったので、発売開始からその人気が高く、同セグメントでは3年連続してベストセラーの座を守ったヒット作である。 今回初めてのマイナーチェンジを受けて、姿かたちはほとんど変わらないものの、実質的な改良を受けたモデルに進化した。 初代のモデルは、確かにサイズ感や走りの面では評価できたものの、ハードプラスチックを多用したインパネをはじめとした室内の質感については、個人的にあまり納得がいかなかった。2015年に起きたVWによるディーゼルゲートに端を発し、BEVに舵を切ったその開発姿勢の中で、ICE搭載車へのリソースが切り取られてしまったとも感じたのである。 今年7月の発表会は、あくまでも日本市場にフォーカスしたものかもしれないが、それでもICEをもっと訴求するというVWの方向転換が現れていて、今回試乗したTクロスにもそうした質感的進化と、メカニズムの進化が見て取れたのである。 具体的な話をしよう。以前はハードプラスチックオンリーだったインパネは、ソフト素材が多用されて、叩くと安っぽいポコポコと音を立てる部分は皆無になった。それにデザインそのものも変更されて、独立したセンターディスプレイが装備される点も今風である。 ただし、以前から指摘していることだが、「ディスカバープロ」に含まれるナビゲーションの使い勝手だけは、依然として全く評価できない。ITリテラシーの高い人なら何とかしてしまうのかもしれないが、果たしてそうした人がユーザーにどれほどいるのか。何度指摘しても治らないので改めて言わせていただくが、このナビの使い勝手は最低である。 そもそも、ナビ画面を呼び出すまでに3度も画面をタッチしなくては